晩秋

b0005129_753566.jpg裏TBでぼけましょう に参加します。









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11月の終わりだった。セキをすると気管が痛くなるので、会社帰りに病院に行くと入院することになった。

入院する前は、毎日1時、2時まで働き、残業がない日はいつも遅くまで飲み、たまの休日には海に行っていた。要するに、ヒマな日は1日もなくて、とにかくやらなければいけない事と、やりたい事が多すぎで時間が足りなかったのだが、入院した途端に、僕はやる事がなくなった。

普段やれないゲームをやろうと、病院にプレステを持ち込んだけど、数時間やって飽きてしまった。つまらなかった。友人は本を買ってきてくれたり、DVDを持ってきてくれたりもしたけど、それでも時間は余っていた。病室で自由に電話したり、打ち合わせができるのなら、もちろん仕事をしたいと思っていたのだが、許可がでるわけもないし、ノートPCがあったので、ずっと音楽を聴いたり、PVをダウンロードしてみたりしていた。

毎朝、7時前に検温と採血で起され、8時に朝食をとり、洗濯をしたりしていると、回診が始まる。10時には、なにもすることがなくなった。

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病院は、明治通りの交差点近くに建っていた。入院した当初、個室しか空いていなかったので、個室に入っていた。日中誰も来ない時は、病室の窓からはとなりの小学校の屋上が見ていた。その他には、面白いものがなかった。小学生が屋上で遊んでいるところをぼーっと見ていた。夜は、病院の出入り口のところにあるベンチに座って携帯電話をかけたりしていたが、その間に救急車や、患者の家族の乗ってきた車がERの駐車場を出入りしていた。
僕以外の人は、みんな忙しそうに動いていた。やることがないのは、自分だけのような気がしていた。
そこのベンチからは、六本木ヒルズが見えた。いつも同じ角度から見ていたので、すぐに飽きてしまった。そのビルを見るたびに、今自分の置かれている状況への不満や不安がつのった。いつも、同じように見えるそのビルが、外に出る事ができない原因のように思えたのだ。

病室の白い壁を見て、過ごすことが多くなった。病院の中に閉じこめられているうちに、本当に病気になってしまいそうだった。

ぼーっと壁を眺めて、ボールを壁に投げる。ボールが跳ね返って、手に戻ってくる。
この空想を、白い壁を見ながら、繰り返した。

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彼女は、よく病院に寄ってくれた。

面会時間は21時までだったので、たまに僕が寝ている事もあったが、彼女が来そうな時間になると病室にいるようにした。病院内には、他にいる場所も特にないのだ。

ドアをノックして、黙って個室に入ってきてコートを脱いで、バックと買ってきたコーヒーを置くと、ベットに座って、冷たい手でそっと僕の頬を触りながら目を覗きこんで、いつも「元気?」と言った。

彼女がつけている香水と、煙草の香りがした。晴れた日は、外の匂いがした。

もとから、話す時には沢山話すけど、そうじゃない時には、黙ってじっとしている人だったし、僕もそうだったから、病室で二人で黙ったままでいることもあった。

たまに、疲れている時はブーツを脱いでベットで寝てしまう時もあって、僕は、そんな時は黙って寝顔を見ていた。毎日ここで、寝ていけばいいのにと思っていた。

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入院して五日目に一度手術した。経過が良くなかったため、入院から2週間が経った頃に、もう一度手術する事を、先生と話し合って決めた。

外苑の銀杏の街路樹のわきにレストランがあって、そこに行きたかったのだけど、もう紅葉は終わっちゃったのかなと、話した事があった。何日かしたあと、彼女がDVDをまた持ってきてくれて、それともう一つ封筒を僕に渡した。

封筒を開けると、そこには、鮮やかな黄色い銀杏の葉が何枚も入っていた。

僕は、もう早く退院して、サンダルじゃない靴を履いて、冷たい風が吹いている冬の街を、空気を吸いながら、二人で歩きたいと思った。

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その後、一週間して2度目の手術を行い、術後の経過もよくて、何日か後に退院できる事になった。退院の日、彼女と荷物をまとめて、家について、着替えをすませて、ふとPCで調べることがあったのを想い出して、ノートを紙袋からテーブルの上に出した。

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ふと紙袋の底を見ると、封筒から何枚か落ちたのか、キレイだった銀杏の葉が乾燥し茶色になったものが、粉々になって、散らばっていた。

もうクリスマス前で、外苑の銀杏を見る事はできなかったけど、でももう、銀杏の葉は本当は必要ではなくて、好きなだけ外の世界を楽しめばいいのだと思った。

行こうよと言う彼女に、ちょっと待って、と言ってノートの電源を入れた。

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あとがき
 今回、裏TBでボケましょうに参加するにあたって、My Funny Valentineと、こちらを書きました。文章にしたのは、日曜日で、先に書いたのはMy Funny Valentineの方です。こちらは、あとがきにもあるように、映像イメージとプロットが頭の中にあったからです。
 で、この晩秋は、メモだけあって、「銀杏」「六本木ヒルズ」「砕けた葉っぱ」。イメージがありました。題名は未だに迷っています。黄色い銀杏がでてくる「Autumn in N.Y.」や、小沢健二 の「いちょう並木のセレナーデ」のイメージが強かったため、思いつきませんでした。これは、変えるかも知れません。「黄色い銀杏の葉」とかそのまんまだし、「もちもちの木」みたいでしょ?
 
 自分では、結末が気に入らないので、少し変えたいのですが、いいのでしょうか?もうちょっと、術後の痛みなんて気にしない、もう自由なのだから、どんどん行こうみたいな、ノリにしたい。

 My Funny Valentineと比較して、こちらを選んだのは、My Funny Valentineが、色が希薄な世界で、これからもこの男と生きていこうっていう話なのに対して、こちらが、白い病室から、外の世界へという話だったからです。でも、My Funny Valentineの方が好きです。
 みなさんは、どちらがお好きですか?聞いてみたいですね、少し。



■裏■裏■裏■裏■【裏TBでぼけましょうテンプレ】■裏■裏■裏■裏■

【ルール】
 TBボケグラチャン大会のお題の記事に対し、ウラボケ会場の記事に
 トラバしてボケて下さい。
 ただし、条件として
 1)エロである
 2)色モノである
 3)何か「色」に関することが出てくる
 の制限あり。上記3つのうちどれかをクリアしていればOKです。
 
 エントリー期限はグラチャン大会と同じ、9/10 21:00までとします。
 
 【審査方法】
 ●グラチャン大会出場者任意の投票による。
 
 ●参加条件は歴代チャンプ以外のすべてのブロガー。
  TB人数制限はありません。

 ※誰でも参加出来るようにこのテンプレを記事の最後にコピペお願いします。

 ★会場   (やみくもバナナメロン http://nightegg.exblog.jp/ ) 

 企画元 ぶちまけ部屋     http://moufu1.exblog.jp/
     やみくもバナナメロン http://nightegg.exblog.jp/        
     MS.POKERFACE    http://sivaxxxx/exblog.jp/     

 協賛  毎日が送りバント http://earll73.exblog.jp/
   
 ★グラチャン大会へのご投票もお忘れなく!
裏■裏■裏■裏■裏■裏■裏■裏■裏■裏■裏■裏■裏■裏■裏■裏■
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by ikkyuu_as_cousaku | 2004-09-07 07:03 | 永日小品